恋する惑星
1994年 香港

原題:重慶森林
英題:ChungKing Express

監督:ウォン・カーウァイ
製作:ジェフ・ラウ
製作総指揮:チャン・イーチェン
製作補:ジャッキー・パン
脚本:ウォン・カーウァイ
撮影:クリストファー・ドイル、アンドリュー・ラウ
助監督:ジョニー・クォン
音楽:フランキー・チャン、ロエル・A・ガルシア
編集:ウィリアム・チョン、カイ・キットウァイ、クォン・チーリョン
美術監督:ウィリアム・チョン
録音:レオン・タッ
出演:金城武、ブリジット・リン、トニー・レオン、フェイ・ウォン、チャウ・カーリン



* 1994年台湾金馬奨、主演男優賞(トニー・レオン)受賞
* 1995年香港電影金像奨、作品賞、監督賞、主演男優賞(トニー・レオン)、編集賞受賞



 長年つきあってきた彼女に突然の別れを告げられた刑事(金城武)。傷心の彼だったが、サングラスで顔を隠し、金髪のカツラをつけた女(ブリジット・リン)に出会い、突然恋に落ちる。しかし、謎の金髪女はなにやらワケありの様子だが・・・。
 スチュワーデスの彼女(チャウ・カーリン)にフラれた警官633(トニー・レオン)。毎晩、夜食を買いに来る彼に興味を持った、ファーストフードショップ店で働く女の子、フェイ(フェイ・ウォン)。ある日彼女は、偶然彼のアパートの鍵を手に入れ、部屋に忍び込んでは大胆に模様替えを始める。二人の恋の行方は・・・?



 明るく色彩感覚にあふれ、スピード感のある映像。いつまでも耳に残る印象的な音楽。情緒とスピードにあふれた語り口。そして、個性的な登場人物、一人一人がとても魅力的。
 彼女が帰ってくることを信じて、自分の誕生日と同じ賞味期限のパイナップルの缶詰をひたすら買い続ける刑事。「5月1日未明、僕は確信した。メイにとって僕と缶詰は大差ないってことを。」 賞味期限が切れて捨てられるだけの缶詰。5月1日の彼の誕生日にも、とうとう彼女は帰らず、賞味期限の切れたパイナップルの缶詰を、一人ひたすら食べるシーンはかわいくて、ちょっとせつなくなります。
 ファーストフード店の店先で出会った、フェイと警官633。店先で「夢のカリフォルニア」をバックに、踊りながら楽しげに店番するフェイが、すごく可愛らしいです。警官のパトロール中に部屋を模様替えする姿も、とても楽しそう。一方の警官633は、そんな大々的な部屋の変化にも気がつかず、別れたスチュワーデスの彼女がなかなか忘れられない様子。フェイの置いた新しい石けんを手にとって、「どうしたんだ、いつのまにかこんな丸まると太って。彼女がいないからってヤケになるな。」 そんな警官633のとぼけた感じも笑えます。
 これまでの香港映画に対するイメージを払拭し、ウォン・カーウァイの名を世界に知らしめたのが、この作品。とにかくポップで明るく、元気の出る映画で、ひとつひとつのセリフとシーン、そして音楽が印象的。それがスピーディな映像にのって流れてくるのがとても気持ちいい!アジア独特のカラフルさと、あふれるパワーを楽しんでください。



 モリモリとパイナップル缶をほおばる金城武が、パイナップル嫌いなのは有名な話。また、前半の刑事と謎の金髪女の話の中にはちらほらとフェイの姿も。フェイが勤める「Midnight Express」は香港でもちょっとした観光地になっています(現在は改装されて、映画のような趣とは違いますが・・・)。香港に旅行に行った際には、ぜひセントラル・マーケットから続く、世界一長いエレベータへもどうぞ。香港の人々の生活風景も垣間見えます。
( 01/07/10 )